「今だから話せる佐藤のコラム 第68号」

「今だから話せる佐藤のコラム 第68号」

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┃◆┃(公社)いわき産学官ネットワーク協会News  2022.11.04
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┃ 「上海レポート」でお馴染みの佐藤忠幸氏より
┃ 『今だから話せる佐藤のコラム』が届きましたのでお知らせいたします。

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中国での会社設立・販路拡大等を支援している、
(公社)いわき産学官ネットワーク協会アドバイザーの佐藤忠幸氏から
「今だから話せる佐藤のコラム 第68号」をお届けいたします。

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  聖徳太子と神仏習合
2022年10月26日 佐藤忠幸

 寒くなってきましたねー。
 富岡川せせらぎ緑道では、樹木の花は殆ど見えず所々紅葉が始まりました。
 最近、韓国の新興宗教に財産を貢がされたと大騒ぎしています。そこに通った大
臣も辞表に追い込まれました。
私見ですがあれは宗教とは言えず、論外です。
 アメリカは、中間選挙を間近にしてバイデン大統領が、キリスト教カトリック派
が強い州でも人口妊娠中絶の権利を認めさせようと躍起に訴えています。
中絶の良し悪しは別として、先進国が、宗教に政治や裁判所が従うなんて不思議です。
 一方イランでは、女性の髪を覆うスカーフ「へジャブ」のかぶり方がイスラム教
の教えに反すると当局に捕まり、拷問や弾圧を受けて死んでいます。
それに反発した市民のデモで数百人の人が射殺されたと報道されています。
 このように未だに宗教が国家や政治を動かしている国が沢山あるのには驚きます
が日本はどうでしょうか?
 本年6月と7月に漢字の起源について記しましたが、それに関連して今号は、日
本の宗教関連について報告させていただきます。
 なお、昨日私の長兄が亡くなりましたのでこれから愛知県豊橋市へ帰郷いたします。
返信は明後日以降となると思いますのでご承知ください。

【日本は異国の宗教輸入に寛大】
 私はマレーシアに1990年代に9年間暮らしました。
マレーシアだけでなく東南アジア諸国へ行くと何処の都市でも世界四大宗教(キリ
スト教、仏教、イスラム教、ヒンズー教)の寺院を見かけ不思議に思いました。
だから多宗教国家なのか、信仰の自由があるのかと思ってしまいますが実態は多宗
教の都市には多民族が暮らしており民族ごとに宗教が決まっているのです。
マレーシアの例では、マレー系の人はイスラム教、中国系の人は仏教かキリスト教
、インド系の人はヒンズー教でした。これは子孫代々に繋がり絶対的です。
したがって異教人と結婚しても構わないが、異教徒とは結婚できません。例えばキ
リスト教徒がイスラム教徒と結婚しようとすると、戒律が緩い方のキリスト教徒が
イスラム教へ改宗するか、結婚をあきらめていました。
 日本を振り返ってみると世界のあらゆる宗教が入っています。
日本には世界のあらゆる宗教があり、日本で起こった新興宗教を含めて日本は世界
有数の多宗教国家です。
そもそも、日本の大昔は自然相手の農業国家でしたから神道しかありませんでした。
 聖徳太子の時代になって大陸から仏教・儒教・道教の輸入がなされました。
それぞれの宗教と一緒に高度な文化・技術が輸入され、聖徳太子はこれにほれ込み
仏教徒に変わりましたが国教とはせず神道は残しました。
 安土桃山時代にはキリスト教の輸入がなされました。
しかし、キリスト教推進派の国に日本統治の意志を感じて禁教とされましたが、明
治時代にそれは復活し、キリスト教徒は爆発的に増えました。
 しかし、それら日本にとっては異教が入っても神道は無くなりませんでした。
伊勢神宮は、神宮もそれを頂点とする神宮組織も千数百年連綿と続いています。
何故でしょうか?

【日本に国教はない】
 マレーシアは多宗教国家だと書きましたが、多数派を占めるマレー系民族の信ず
るイスラム教が国教です。
中近東諸国も宗派は違えども大半がイスラム教国家です。
欧州諸国も宗派の違いはあろうとも大半の国がキリスト教を国教としています。
仏教を国教としているのはカンボジアやブータンなど小国だけです。
仏教国だったインドはヒンズー教に変わり、中国は仏教や儒教が一体化した「中国
的宗教」が主体となっていますが国教はありません。
アメリカは移民国家のため、政教分離が進んでいて国教制度はありませんが事実上
キリスト教国家です。ただし、出身国によって宗派が違うので右派・左派の争いは
絶えません。
イギリスは幾つかの小国が併合された国ですから幾つかの宗派がありますが国教制
度はありません。
しかし、アメリカもイギリスもキリスト教が事実上の国教ですから、国王や大統領
就任など国家的行事の全てにキリスト教が主役として登場します。
 日本にも国教はありません。
しかし、 王政復古を実現した明治新政府は明治元年、祭政一致などを布告して神
道の国教化を進め、神仏判然令で神社から仏教的要素を除去しました。
その後、神社を「国家の宗祀」と位置づけ、神社神道を他の諸宗教とは異なる公
的な扱いとし、国家神道が成立しました。
第二次世界大戦前後には軍部がそれを悪用し日本は「神道国家」だ「神道は国教」
だとして国民に押し付け、神風特攻隊などを正当化してしまったのはご承知の通
りです。
 旧満州はもちろん、中国も上海など大都市に、そして朝鮮半島や台湾には神社
が多数造営されました。今は跡形もないのが残念ですが、造営目的が日本人駐
在者の為というよりは現地人に参拝を押し付けようとしたことが戦後消滅された
原因だと思います。

【日本人は平気で幾つもの宗教拝む】
 10月31日のハロウィンは11月1日のキリスト教の聖人に祈りを捧げる祝日
「諸聖人の日」の前夜祭という意味で、秋の収穫をお祝いし、先祖の霊をお迎えす
るとともに悪霊を追い払う宗教行事ですが、日本の若者はそれを承知していますか?
正月になると初詣をしますね。何処へ行きますか?
お寺ですか?神社ですか?教会ですか?
結婚式は何処で行いますか?お寺ですか?教会ですか?
どなたかが亡くなるとお葬式をしますが、何式ですか?
檀家でも無いのに必ずと言うほどお坊様を呼んでお経を唱えていただきますが何
故ですか?
町内のお祭りは何の神様をお祀りしてある神社で何をお祈りする行事でしょうか?
食事の時には「頂きます」と手を合わせます。誰に、どの神様に祈っているので
しょうか?
 日本人に、あなたの信仰する宗教は何ですか?と聞いても、大部分の方が「特
にありません」とのお答えですが、節目の行事は何らかの宗教が絡んでお祈りし
ます。何故でしょうか?
 世界には多宗教国家は沢山ありますが、一人ひとりというよりは家族ごとに信
仰する宗教は一宗教です。
中には村や町ごとに決っており異教徒は村八分になるぐらいです。
 行事ごとにお参りする宗教が違うのは日本と中国ぐらいなものでしょう。
中国は、宗教施設だけでなく宗教感そのものが文化大革命で壊されてしまい無宗
教国家になったことから致し方ありません。
 しかし、日本は無宗教ではなく、宗教派には無所属であり多数を掛け持ちして
願いをする無派閥的な不思議な国です。
どうしてでしょうか?

【世界唯一の習合思想】
 聖徳太子の時代に仏教徒の勢いが増し、国教とすべきとの運動がなされました。
 日本で初めて仏さんを拝んだ天皇とされる用明天皇が崩御されると、日本古来
の神を擁護する物部一族と仏教派の曽我氏との宗教戦争が起こってしまいました。
聖徳太子は曽我氏側につき四天王に戦勝祈願をし、勝ったらお寺を造ると約束し、
勝ったことから四天王寺を造営したと言う話は有名です。
太子は、一時は仏教を国教にしようと考えたようですが、伊勢神宮の祭神である
天照大御神の子孫とされる天皇の立場を考えて「神仏調和」をはかり、国教にす
ることは断念しましたが法隆寺をはじめ公私にわたって全国にお寺を建立された
ことはご承知の通りです。
聖徳太子の時代は「神仏調和」でしたが、後に「神仏習合」へとなります。
 「神仏習合」とは、神道信仰と仏教信仰とを融合調和することで、習合とは、
本来相異なる教義・教理を結合また折衷することです。
 この神仏調和・習合の思想や風習は日本人の思想を大きく変え、今も特色のあ
る人種となっています。
もともと、宗教的にいうと、一つを信仰することは他を排することでもあり、一
人の人間が複数の宗教を信仰することは堕落と言われてきました。これが先進国
でもありました。
 ところが、聖徳太子の発想と実践は、宗教的には堕落であっても政治的には飛
躍でした。
 そんな発想と実践をしたのは世界で聖徳太子だけのようです。

【「ええとこどり」が得意な日本】
 聖徳太子のおかげで、輸入した宗教と神道との「神仏習合」そして「ええとこ
どり」が進み、宗教と一緒に輸入した文化や技術を吸収したおかげで今の日本が
あると言えるでしょう。
明治時代になって西洋文明が入ってくると、たちまち取り入れて鉄道や通信網を
作りました。
議会制度や徴兵制度も敷き、各技術も学校も洋式を取り入れました。
戦後の日本も世界の技術を輸入しそれを「ええとこどり」して急成長しました。
 しかし、西洋の自由思想や家族制度は日本の体質に合わないとして取り入れま
せん。
これを「和魂洋才」と称して自己自賛していました。

 それ以前に、西洋文明は、インドやトルコ・ペルシャなども西洋宗教に触れて
いたのですが、何処も古くからの文明・宗教がありそれを捨てることは出来ない
として輸入を拒否しています。
「ええとこどり」の思考があれば日本より早くからそれを輸入し発展していたで
しょう。
 戦後日本が、外国の高度技術製品のデッドコピーを作るところから始まり、そ
の技術を自分のものにしたらその上の技術を築き上げるのは短期間で済みます。
その積み重ねで高度成長したことはご承知の通りです。

【日本人は神様よりも人】
 日本は、前記の如く一人一宗教ではなくなりましたが宗教信仰は捨ててはいま
せん。
しかし、「ええとこどり」「そこにいる人重視」の宗教感が世界とは異なってい
るようです。
カトリック系キリスト教、イスラム教、ユダヤ教といった一神教の世界では、神
と自分一人が対峙し、他の人間との関係は神を通して存在します。これは日本人
には理解困難でしょうね。
 その典型例が、結婚式でのお誓いです。
神父さん「この相手と一生共に・・・・」と神前で問われて「誓います」と答え
ています。
日本人の大部分は、神様を証人として相手と誓った程度と思っていますから平気
で直ぐに離婚できます。
しかし、一神教の世界では神様に誓ったことですから、どんな事情があろうとも
離婚は許されません。
 今日は仏さんに誓って、明日は稲荷さんに誓って、明後日は氏神様さんに誓って、
ということを平気で出来るのが日本人です。
むしろ日本人にとって大事なのは、今、自分の属している人間関係の方でしょう。
これが日本的な職場共同体を形成する精神的基盤となり「会社人間・組織人間」
集団を作ったと言われています。
 また「職場共同体」が戦後日本の高度成長を支えてきたのですが、時代が進ん
だ今となるとその思想に胡坐をかいた官僚社会に頼りすぎて日本の成長は停まって
しまったと思います。
 ちょっと難しい話になってしまいごめんなさい。

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