「今だから話せる佐藤のコラム 第76号」

「今だから話せる佐藤のコラム 第76号」

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┃◆┃(公社)いわき産学官ネットワーク協会News  2023.06.19
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┃ 「上海レポート」でお馴染みの佐藤忠幸氏より
┃ 『今だから話せる佐藤のコラム』が届きましたのでお知らせいたします。

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中国での会社設立・販路拡大等を支援している、
(公社)いわき産学官ネットワーク協会アドバイザーの佐藤忠幸氏から
「今だから話せる佐藤のコラム 第76号」をお届けいたします。

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マレーの虎 山下奉文
 2023年6月17日 佐藤忠幸

 今日は初夏の陽気で嬉しいですね。
 富岡川せせらぎ緑道では、色々なアジサイが華やかです。
アジサイの花の色が白や青紫・赤紫と異なるのは、もちろん成長段階ごとに色が変
わるということもありますが、植えてある土地の栄養素によって基本色が変わるそ
うですね。
 ところで私のコラムは毎月第四水曜日に配信しておりますが、今月は早めの今日
出させていただきます。
というのは、明日から約一ヵ月入院し、6月19日(月)に脊柱管狭窄症の手術を
することが急に決まったからです。
「手術の範囲が広い為時間もかかって大変だが大丈夫だよ、終わってからリハビリ
すれば歩けるようになるよ」と医者に言われ決意した次第です。
もう少し普通に生きたいので頑張ります。
 私はひょんなことから1990年から9年間も、マレーシアで業務をし生活をし
てきました。
今号は前号に続いてマレーの虎それも二人目の虎・山下奉文について報告いたしま
す。

【山下奉文・マレーの虎】
 山下奉文は太平洋戦争開戦を控えた1941年に南方軍司令官に任命され、マレ
ー作戦を指揮した人です
 1941年12月8日午前1時30分(日本時間)、マレー半島への上陸作戦を
開始しました。
ハワイへの真珠湾攻撃の1時間20分前です。
 この戦術で有名になったのは自転車を活用した銀輪部隊であり、銀輪部隊の快走
は退却するイギリス兵に絶えず圧迫感を与え、陣地を構築する暇を与えず、たった
2カ月でマレー半島を制圧し、シンガポール要塞への攻撃を開始しました。
 シンガポール要塞は、日本軍の3倍以上の軍隊が守っていましたが、山下の作戦
の前にあっけなく陥落させてしまいました。
 戦時中の、日本の新聞は山下の勇猛果敢なさまを「マレーの虎」と評し山下は国
民的な英雄となりましたが、マレーシア・シンガポールで行った共産党系華僑粛清
事件は、長い間両国から恨みをかっていました。
 山下は停戦協議の席上で、全面降伏に難色を示していたイギリス軍司令官に対し
「イエスかノーか」と強く降伏を迫ったという逸話は有名ですが、実際にはより落
ち着いた紳士的な文言・口調の会話だったそうです。
 この巷に伝わる交渉時の山下の「イエスかノーか」の場面を再現した蝋人形が、
シンガポール・セントーサ島の歴史博物館に展示されており、私も1996年に拝
観しました。
前評判では反日的な展示物が多いので見ると気分が悪いよと言われていましたが振
り切って行ったところ、極めて冷静な展示に変わっており驚きました。
 増えてきた日本人観光客を強く意識したようです。

【中国系が多いマレー半島】
 マレーシアでは23% シンガポールにおいては76%が中国系です。
 戦前・戦時中の中国は国民党と共産党とが争っていたことはご承知の通りです。
 南方に華僑として渡った中国人の大半は無党派ですが、共産党員として逃げた者
や南方に共産党を拡げようとした者なども多数おり、これを山下奉文は警戒しまし
た。
山下は敵軍捕虜には手厚い心遣いをする一方で、マレーやシンガポールに多数在住
していた共産党系華僑に対しては弾圧することを決め、活発な抗日運動を武力で粛
清する方針を定め、シンガポール入城前に華僑粛清方針である「掃蕩作戦命令」を
全軍に通知したのです。
 マレーシアでは村ごと全員を撃ち殺したこともあります。
それは、共産党員が逃げ込んだ村を囲み「共産党員でないものは出てこい、出ない
と撃ち殺すぞ」と言いましたが.多くの村人は共産党員に後ろから銃を突きつけら
れており出られません。
この為全員撃ち殺されるという悲劇を生んだのです。
この悲劇は特にマレーシア東海岸の村で多かったようです。
 シンガポールに多数在住していた華僑に対しては最初から弾圧することを決めて
いました。
 山下は 北支那方面軍参謀長の際に「治安粛清要綱」を作成し、活発な抗日運動
を武力で粛清する方針を定めており、中国大陸では武力を背景とした高圧的な統治
を行った実績もありました。
山下はシンガポール入城前に華僑粛清方針である「掃蕩作戦命令」を全軍に通知し
ました。
軍はまもなくその中心部隊を新しい作戦に移しますが、シンガポールの治安は非常
に悪く、ゲリラのような抗日中国人の地下活動は広がってきているし、それが軍の
作戦を妨げていました。
 軍司令官には、これら抗日分子を絶滅・掃すべしとの指示が出されました。
「地下にもぐった義勇軍兵士や共産主義者によってゲリラ戦を開始する準備が進め
られている」「市内での略奪はひどくなっているし、各地で捨てられた武器弾薬が
抗日中国人によって略奪され隠匿されている」など、華僑を粛清しなければいけな
い理由を説明しています。

 山下は、日本軍トップとの折り合いが悪かったようで、日本勤務はほとんどなく
大臣にもなれず、その後満州経由フィリピンに渡りマニラにて終戦を迎えました。
 終戦後現地で軍事裁判にかけられ死刑に宣告され直ちに死刑が執行されました。

【マレー半島の対日本人感情】
 私は、1990年代にマレーシアで9年も暮らし、仕事でも遊びでもよき仲間に
恵まれよい思い出ばかりです。
マレーシア東海岸やシンガポールにも旅行やら出張で度々行きましたがよい思い出
ばかりです。
 そういう中で嫌な思い出が幾つかあります。
マレーシア東海岸に行くときは、クアラルンプールの社員から「絶対に現地のタク
シーに乗るな」と言われていましたがその訳がシンガポールで分かりました。
それは、シンガポールのタクシー運転手の日本人に対する訴えでした。
 シンガポールのタクシーに乗った時「お客さんは日本人ですね?日本人なら座席
の後ろにある写真アルバムを見てください」と言われ、アルバムを見たら戦中・戦
後のむごたらしい国土と死骸の山の写真でした。
何と言ったか覚えていませんが、素直に謝った記憶があります。
 そうしたら運転手は「貴方たち日本人が悪いわけではありません、日本軍が悪い
のです。
その事実だけ知っておいて欲しいのです。お願いします」
と言ってくれました。

【日本語が通じた母親】
 私がマレーシア現地法人社長時代に片腕として重用した若手役員J氏は、一人前の
役員として社員の誰からも認められるようになりました。
その象徴として、若いながらも高級マンションを購入し、そのお披露目パーティに
招待された時の話です。
 中庭でバーベキューパーティが開催され、ご家族を紹介されました。
 母上を紹介された時「この度はおめでとうございます。息子さんのご努力には感
謝しております」と、私が拙い英語で話しかけたところ、
「こちらこそ、息子が大変お世話になっており有難うございます」と日本語で返っ
てきました。
もちろん私も驚きましたが、もっと驚いたのは息子のJ氏です。
母親が日本語を話せることをこの時に初めて知ったのです。
「日本語はいつ何処で勉強されたのですか?」という私の問いに「50年ほど前に
学校で習いました」とのお答えです。
とっさに、日本軍が太平洋戦争中マレーシアを占領し日本語学習を強要したことを
思い出し、思わず「昔の日本は随分悪いことをして申し訳ありません」と謝りまし
た。
 母上は「あなた方が悪いのではありません、日本軍が悪かったのです、でも今は
何とも思っていません」と仰ってくれました。
英語と日本語半々のこの会話を“茫然”として聞いていたJ氏は「意味は何となく
しか分からないが物凄く嬉しいよ」とのことでした。
突然占領され惨めな思いを(特に中国系は)させられ、おまけに日本語学習を強要
された母親は、最愛の息子がその日系企業に入ることには葛藤があったと思います。
息子の意志を尊重し、黙って許してくれたことにJ氏は感謝していました。

 マレーシアだけでなくアジア諸国は植民地の変遷が激しく嫌な歴史を抱えている
ことを承知おきください。

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